若岡拓也の日本列島大縦走

若岡拓也の日本列島大縦走 #15(最終回)
2023.10.27 若岡拓也

若岡拓也の日本列島大縦走 #15(最終回)

この週刊記事は、日本列島を大縦走する若岡さんの走破記録を、彼自身の言葉で振り返りながら、日本の自然の豊かさやロングトレイルの良さを発信する連載です。最終回は、ゴールまでの残り5日間の記録。7月の北海道・羅臼岳からスタートした旅は、10月22日12時に鹿児島の開聞岳でゴールとなり、若岡さんのサポーターや友人、地元の登山者に囲まれての賑やかなフィニッシュでした!最後のつぶやきは、総距離4580km、100日間にわたる壮大なチャレンジを、ゴール直後の興奮のまま振り返ってもらいました。

日本列島大縦走の詳細については、こちらをご覧ください!

今週の記録

10/18 96日目 33.86km

山域を熟知していないと苦戦するのだと痛感。前日ガイドをしてくれた陽子さんは不在で、何度か道を間違えながら九州脊梁山地を進むことになった。同じTOPOアスリートの南さん、そのファンで地元在住の川満くんの3人だ。年若い川満くんが終始いじられ役に徹してくれて楽しい山行だった。熊本・水上村の「瓢鰻亭(ひょうまんてい)」で1泊。オーナー夫妻らとすき焼きを囲み、食べ切れないほどの肉が出てきた。これで5,000円は価格破壊すぎる。

10/19 97日目 65.89km

ロード区間ということで、のんびりとした1日。帰路に着く南さんと30kmほど走り、粉物を食べて別れた後、えびの市へ。道の駅で遭遇した女子高生から、「お金って何ですか?」と質問を受ける。走ってきた直後でうまく答えられなかった。何だろう。目的ではなく、手段のひとつで、あるととても便利なもの、といったところだろうか。

10/20 98日目 64.18km

ここ数日でこの日だけ荒れていた。霧島連山を縦走する日に限って、なぜなのだ。嘆いても仕方ないので、韓国岳を目指す。晴れ間がのぞいて、山頂部から絶景が見られれば儲け物などという期待は霧散。天気予報よりも雨風が激しい。風速13mと出ていたが、実際はもっと強かった。脂肪が減り、筋肉が落ちたせいか、体温が維持しづらく、縦走を断念。そのまま下山して鹿児島に向かった。

10/21 99日目 69.07km

桜島が近づき、遠ざかっていった。もちろん、桜島が動くはずもなく、自分が走って接近して離れているだけだ。スポンサードしてくれているGOOOOD HOMEの新留さんがサポートに入り、鹿児島在住のJackさん、福岡から来た安河内さんと伴さん、パーゴのすけさん、20年近く親交のある新聞記者・宮崎さんがリレー式に並走してくれた。人のつながりに支えられている大縦走の象徴的な1日だった。

10/22 100日目 36.23km

いよいよ最終日。99日目と思っていたが、数え間違いで実は100日目だった。峠を越えると、目的地である開聞岳が見えてきた。喜びや感動はなかった。その山頂に到達すれば、ひとまず大縦走が終わりを迎える。明日から日常に戻るという感傷もない。自分が知床からここまで走ってきたことにも実感がなかった。不思議と胸の内は静かで落ち着いていた。頂上に至ってもそれは変わらなかった。ただ、一緒に喜んでくれる仲間がいることが嬉しかった。

今週のつぶやき

たしかに存在する「道」

最終日は開聞岳に向かう前に、逆方向へと遠回り。指宿の海岸にある知林ヶ島(ちりんがしま)へと向かった。

歩いて渡ることができる一風変わった島である。条件は、3〜10月にかけて、大潮、中潮の干潮時であること。潮が引くと「砂の道」が現れて、島へとアクセスできるようになる。

これまでに何度か、鹿児島に来たついでに行こうとしてきたが、条件が合わなくて断念してきた。前夜、気まぐれに調べたところ、早朝から砂の道が出現すると分かり、足を伸ばすことにした。

九州本土と島を結ぶ「砂の道」は、人と人のつながりによく似ている。普段は見えていなくとも、ふとした瞬間に現れてくる。この旅路を振り返っても、人とのつながりに驚き、胸が熱くなることの連続だった。

ほとんど初対面にも関わらず汗をかいてくれた新しい友人。北海道で出会った人の友人と北アルプスで出会い、新婚旅行に来た夫婦と富良野で落ち合い、朝日連峰で再会して山小屋で1泊した。たまたま僕が走っている姿を見つけてくれた友人もいた。旅の予定を変えて会いに来てくれた先輩、離れていても動向を気にしてくれる仲間もいた。

すべてが嬉しかった。

人は海に浮かぶ島のようなもので、孤立していると時に孤独を感じることもある。目に見えにくいものにつながりを感じることは難しいかもしれない。それでも、独りではない。この大縦走において、大半の時間を1人で走ってきたが、孤独を感じることはなかった。目に見えなくとも「砂の道」は確かに存在する。

トレイルを歩くということも同じだ。先行する人が通っているから、トレイルは存在する。誰かの存在を感じながら歩を進めてきた。同じようにして、自分がつけてきた踏み跡も、明日の誰かとつながる。運が良ければ、道の途中で人と交わるかもしれない。
道は続いていく。生ある限り。旅は終わらない。だからなのか、大縦走が終わっても感傷に浸るひまもない。




編集後記(皆川大輔)

週刊でお送りしてきた「若岡拓也の日本列島大縦走」。最終回を迎えるにあたり、ゴール直前の若岡さんに会いに鹿児島へ飛びました。現地にはサポーターが大集結。彼のチャレンジを応援してきたという共通項から、初対面にも関わらずすぐに意気投合。時に楽しく、時に真剣に最後の2日間を一緒に走ることができました。こうやって若岡さんの応援を通して、日本中のランナーや登山者が繋がっていく様子をみてきました。4,600km・100日間の行程は「道」だけではなく、「人」も繋いでいったのです。若岡さんにしか出来ない価値のあるチャレンジだったと思います。

今回若岡さんはRUSHを、長くて厳しい旅の相棒に選んでくれました。パーゴワークスは彼の挑戦を、プロダクトサポートという形で応援する事に。また旅の記録をPAAGO MAGAZINEで毎週更新。総数は15本。7月の北海道から3ヵ月間にわたり彼の軌跡を追いかけました。毎日GPSで現在地を確認し、一喜一憂しながら見守ってきました。若岡さんから届くレポートを一番楽しみにしていたのは、ほかの誰よりも僕達だったのです。