若岡拓也の日本列島大縦走

若岡拓也の日本列島大縦走 #8
2023.09.08 若岡拓也

若岡拓也の日本列島大縦走 #8

PAAGO MAGAZINEでは、日本列島大縦走中の若岡さんの走破記録を週ごとにレポしていきます。スタートから50日が経過し、若岡さんは群馬県から長野県に突入。道中で露天風呂に浸かり、そして信越トレイルを抜けようとすると、あるものが見当たらない......!? みなさんもどこかで若岡さんに会ったら、ぜひ写真を撮ってパーゴワークスまで送ってください! どんどん紹介していきたいと思います。

日本列島大縦走の詳細については、こちらをご覧ください!

今週の記録

8/30 47日目 29.18km

西黒尾根から谷川連峰を西に抜けるだけの1日。30km前後で終わるため、気が楽だ。日差しが強く、首が痛い。北西に登っているからだ。首が日焼けするのは久しぶり。東北では終始南下してばかりだった。稜線に出てからは、雲と霧のおかげで気持ちよくたどることができた。平標の小屋で管理人夫妻と再会。2年前に本州縦断の際に宿泊したことを覚えてくれていた。今回はロングトレイルを作ろうとしていると説明すると、愉快そうに笑っていた。

8/31 48日目 55.29km

車で行くことのできない赤湯温泉に朝から浸かる。勢いよく流れる川を目の前にした露天風呂。脱衣所はなく、素っ裸である。出入りの様子は丸見えだが、些細なことだ。 苗場山頂ヒュッテではスタッフの男性と仲良くなり、余っていたご飯をもらい、腹いっぱいに平らげた。さらに屋根に登らせてもらい、先ほどまで見ていた山頂部の湿原がさらなる絶景に早変わり。眺望のない山頂よりも、実はヒュッテの屋根上が本当の山頂なのではなかろうか。

9/1 49日目 28.16km

気がつけば9月になっていた。そして、いつの間にか信越トレイルである。天水山からのセクションはブナ林がとても美しい。こぼれてくる木漏れ日に足がとまる。トレイル整備ボランティアの方々と出会う。まったく人が歩いておらず、嬉しくなって話し込む。実はボラの方々も同じだったようで、暑さのせいでハイカーがほとんどいないとのこと。確かにこの日は誰とも出会わなかった。

9/2 50日目 61.33km

信越トレイルの西側は人工林や畑もあり、親しみやすい風景だった。東側とは異なる雰囲気。斑尾山まではスキー場のゲレンデを通る。これも手付かずな雰囲気のある東側との大きな違いだろう。 斑尾の山頂は眺望なし。すぐとなりにある大明神岳からは見事な眺め。野尻湖の奥に妙高山、黒姫山がそびえる。そこでGoProを使って撮影したのを最後にカメラの存在を忘れてしまう。下山して気づいた時にはGoProが見当たらない。カメラ自体よりも中に入っているデータを失ったことが痛い。

9/3 51日目 39.10km

GoProが見つからない。諦めて気持ちを切り替えたところで、スマホにメッセージが届く。GoProを拾ったと記されていた。驚きのあまり、声を上げてしまい、すこし震えた。 誰か拾うことは想定していたが、直接自分にメッセージが届いたのだ。想像を大幅に超える出来事だった。それだけではない。拾ったのは同じシューズ、ソックスのサポートを受けている大淵千鶴さん。出来すぎた偶然である。

9/4 52日目 55.30km 

菅平から蓼科山の手前まで、舗装路をひた走る。石川から2組がサポートにやってきた。1組目は両親。何をすればいい?と、よく分かっていない。10km前後を目安に、観光スポットを探して先回りしてもらう。これで、観光しつつ待ってもらえる。もう1組は友人の荘司夫妻。2人で役割分担して、夫が並走、妻はエイドワークをしてもらい、60km、獲得標高1,000mオーバーの登りを楽しく走ることができた。長門牧場のソフトクリームが濃厚すぎて、キツかったことは忘れた。

9/5 53日目 19.36km

蓼科山から入って北八ヶ岳を縦走。あちこちで見かけるコケが美しい。立ち止まりたくなるが、山小屋に泊まるため、早めに到着しなくてはならない。 午後3時を少し回ったところで、一夜を過ごす高見石小屋に到着。18歳のスタッフ、とーやくんは高校を卒業したばかりで、春から小屋で働いている。大好きな山を職場に。同じ年の頃になにも考えていなかった身としては、彼の存在はまぶしかった。もう1人の女性スタッフもまだ若い。山登りが好きというわけではないが、自然が好きで小屋勤務。冬にヨーロッパ滞在を予定していると聞き、ドイツやアイスランドの美しいトレイルを紹介しておいた。これで山好きになるだろう。

今週のつぶやき

整備されたトレイルに思うこと

 曲がりくねったブナがどこまでも続く。モダンアートを思わせる曲線だった。信越トレイルを代表する風景が豪雪地帯ならではのブナ林。雪の重みでブナの幹が曲がったまま巨木になる。

いったいどれほどの雪が降り積もるのだろうと思わされる。信越トレイルの地図を記した大きな看板が地面に沈んでいることにも驚かされた。

驚きは自然そのものだけでなく、トレイルの整備具合にも感じられる。整備ボランティアの方々と出会った天水山付近だけでなく、ずっと気持ちよく走ることのできるトレイルが続いていた。

ササや下草はしっかり刈り払いつつ、頭の高さに張り出してきた枝はそのまま残しておく。自然な状態を残そうとする意思の表れのようだった。

神社の境内や参道のようだ。人の手がきめ細やかに加えられているのに、自然を感じさせる空間をつくる点で似ていた。

 そんなことを考えていたら、神社の参道とトレイルの違いはなんだろう。ひょっとすると同じようなものなのか、などと思考が道に迷いだした。美しきトレイルは時に人を惑わせる。考えすぎてはいけないのである。