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若岡拓也の日本列島大縦走
若岡拓也の日本列島大縦走 #11
PAAGO MAGAZINEでは、日本列島大縦走中の若岡さんの走破記録を週ごとにレポしていきます。今週は北陸エリアを抜けて、ついに西日本に突入!走行距離はなんと3000kmを突破しました。みなさんもどこかで若岡さんに会ったら、ぜひ写真を撮ってパーゴワークスまで送ってください!どんどん紹介していきたいと思います。
日本列島大縦走の詳細については、こちらをご覧ください!
今週の記録
9/20 68日目 50.3km
白山麓の岩間山荘からスタート。たっぷり朝食をとった後でやや腹が苦しい。福井から来たモリ兄が並走。道中では、30年来の付き合いがある大判焼き屋「山法師」に立ち寄る。テレビで紹介されて人気に火がつき、平日でも列ができることも。店主のおばちゃんに「すごいねえ」と言われると、なんだか嬉しくも照れ臭く、小学生の頃に戻ったような気になった。
白山信仰の本宮である白山比咩神社で参拝する。白山登山と参拝はセットである。スギやケヤキの巨木が植えられた表参道は美しくも、神域にふさわしい厳かさを醸し出していた。
9/21 69日目 56.1km
加賀海岸、あわら市、福井市を行く。ハイライトは国定公園である加賀海岸。海沿いのトレイルは眺望が最高で、アップダウンが少なく、気持ちよく走れる。鈍色の曇り空なのは北陸らしいといえば北陸らしい。軽快に走った先にある奇岩群はいつ見ても圧巻。片野海岸に岩の連なりが突如として現れる。うねうねと波打つように岩の塊が砂浜に沿って伸びている。滑らかな曲線で構成されているのは、凝灰岩が浸食されてつくられたため。北陸のカッパドキアだ。膨大な年月をかけて浸食、隆起を繰り返すと、そのうちカッパドキアのようになるはず。知らんけど。
9/22 70日目 48.2km
スパイダーマンになるところだった。文殊山、三里山、武衛山、日野山と、福井県内の里山をたどる。標高1,000mに満たないが、街中から近く、手軽に登れて眺めがいい。文殊山には3,000回登ったレジェンドがいて、この日も朝から登っていた。金曜ということもあって、各山とも登山者は少なめ。縦走ルートには人がいない。そのため、延々とクモの巣を身体中に浴びてしまう。目や口に直撃したり、大きなクモの糸だと、何本も連なっていると強度があって体の方が弾かれそうになる。あまりにクモの糸を全身で摂取しすぎて、さすがにうんざりした。
9/23 71日目 68.2km
山をいくつかまたいで滋賀に入り、高島トレイルを踏破する予定だったが、ロードから攻めていくことに変更。広島から並走に来てくれた友人しほちゃんと走るため、確実に計算して走れるルートを取りたかったからだ。小柄な女性で荷物は7〜8kg。山間部で潰れると、帰ることもままならない。楽しく走ることを優先した。
40kmほどで同行のしほちゃんは電車でワープ。そこからは1人で峠越え。長い登りが終わろうとしたところに、1台の車から男性が下りてきた。福井在住のゲンさんだ。「何もなくて、キツいだろうから」と飲み物や食べ物を用意してくれていた。カッコいいとはこういうことだ。
9/24 72日目 60.3km
高島トレイルを全線踏破する。それが当初の計画だったが、大幅に短縮。横谷峠ー根来坂峠まで。関東からアルプスにかけての山々を抜けて、燃え尽き症候群のようになっていたのかも。気持ちが乗らない。
いざ足を踏み入れると、走りやすいエリアで楽しかった。だが、短縮を見直そうとまでは気持ちが上がらない。後ろめたい気持ちはあるものの、あっさりと下山した。根来坂峠からは、かつて交易の道として栄えた「鯖街道」のルートが残っている。若狭から京都へと海産物、塩を運んだ歴史の道は険しいトレイル。荷運びにはかなりタフだ。よくぞ、こんな道を通ったものだ。この日もっとも心の動いた区間だった。
9/25 73日目 46.3km
山を登ると、そこはリゾート地だった。明王院の登山口から、武奈ヶ岳を経てびわ湖バレイに到着。ゴンドラで上がってきた観光客でにぎわっていた。Tシャツ、短パン姿で汗をかいているのは、朝合流したゲンさんと僕だけ。場違いな格好だが、気にせずに琵琶湖を一望できるテラス席の特は長椅子に座る。映える風景にうまく溶け込めただろうか。
それにしても、比良山系の稜線はいつ来ても楽しい。晴れていると、琵琶湖の青色が際立つ。ちょっと進んでは目をやると、湖の見え方が変わり、新鮮さが損なわれない。絶えず発見があり、足を止めて見入ってしまう。
9/26 74日目 5.6km
京都市内に滞在して休養。南アルプスに入る前に休んで以来、16日ぶりの停滞だった。ここのところ、午後になると胸焼けが起きる日が出てきた。ゆっくり休んで回復に努める。ふじもと整骨院で体を整えてもらう。面白い体だと言われた。
今週のつぶやき
やっぱり「楽しい」は強い。
生まれ育った北陸を満喫した1週間だった。
白山を抜けてからは、高い山はなく、するすると進める楽しいトレイルが続く。
加賀海岸は日本海に突き出た加佐ノ岬から、風光明媚な海岸線が伸びている。起伏は少なく、海景を眺めながら気持ちよく走ることができる。
地元ながら、加賀海岸シーサイドトレイルランというレースで走るまで知らなかったコースだった。昨年、出場して以降、気が付けば帰省のたびに走っているトレイルだ。
いつ来ても楽しく走れるというのは強い。3,000km近く踏破してきた今回も、やはり楽しかった。
県境をまたいだ福井は里山パラダイスだ。来年3月に新幹線が開業すると、関東からも遊びに来ればいいのにと思うほど。街中からすぐに登りに行ける。
短い縦走を終えて下山すれば、また市街地に出る。コンビニに立ち寄って、今回のように次の山へと向かうことも容易である。
そして、それぞれ標高こそ低いが眺望はとてもよい。意外と高度感があり、市街地や田園風景を間近に見下ろせる。
今回のルートだと、獲得標高は2,000mを超えるが、それほど登った感覚はない。体調を崩し気味だったが、それでも「楽しい」が勝っていた。
楽しい、心地よいはバカにならない。
北陸の山でもっとも登られている山ベスト3に福井の文殊山が入っているのだ。立山、白山に次いで、里山が食い込んでいる。文殊山に関しては親しみやすく、登って楽しい、気持ちがいいからだろう。
滋賀に入り、武奈ヶ岳から権現山への縦走も同じだ。琵琶湖の眺めが抜群に素晴らしい。いつ来ても新鮮な気持ちで見惚れてしまう。
ロープウェイで来やすいこともあり、観光地としてにぎわうのも当然だ。「楽しい」が「手軽」と手を組んだのだから、こんなに強力なコンビはない。
唯一の問題は、つい長居してしまい、その日の行程が夜に食い込むこと。帳尻を合わせるために夕方から必死になる。楽しいのは時に罪なのだ。