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OMM JAPAN 2023 イベントレポート
2023.11.29 REPORT

OMM JAPAN 2023 イベントレポート

「OMMで入賞してきて」

・・・斎藤から急な無茶振りをされたものの、そもそもOMMって何? 調べてみると、OMMは50年以上前にイギリスで生まれたナビゲーションスポーツとのこと。2人で1泊2日に必要な衣食住を全て背負って、地図とコンパスを頼りに野山を走るという。日本でも2014年から開催されていて熱狂的なファンが多く、10回目の今年は1500人が参加するらしい。今までトレイルランをやってきたから、山を走る楽しさは知っている。だけれど、地図を見ながら走る?夜は氷点下?宴会をする?頭の中は想像できないことだらけだった。「入賞なんてとんでもない」と内心思いながら、出場に向けて準備をすることにした。

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パーゴワークスは2014年の第1回大会からレース参加とブース出展をしているOMMの大ファン。今年社内から参加した3チームのうち、入社2ヶ月で右も左も分からないまま初参加したスタッフの梅田が、今回のOMMレースと、ブース出展の様子をお届けします。

大会前日譚〜社内パッキング大会〜

左:先輩スタッフの桜井は厳しくギアをチェック/

右:梅田・クノールペアはRUSH 20にパッキング

OMMに参加することが決まったものの、私を含めたスタッフ3人が初めての参加。そこで、大会1週間前に社内でルール講習&装備点検会が開催された。「地図の上が北です」「防寒着はこれだと足りないかも」など、事前に相談できて、とても心強い。

私がこれまで出ていたトレランレースは、走るのに必要なものだけ持っていけばいいが、OMMでは自分とバディで衣食住の全てを持っていく。自分の好きな食料を詰め込めば豪華な夕食になるが、一方で重りになってしまう。バランスを考えるのが難しかったが、他のスタッフの荷物も参考に、あーだこーだ言いながら考えるのは楽しかった。荷物の準備だけでこんなにワクワクするなんて! 

ただし、パッキングは一苦労。パーゴにはオーバーナイト向けのRUSH 30があるが、「20に入れられたらカッコいいよね」のノリで、私とクノールはRUSH 20とNINJA TENT、西川&相田ペアはRUSH 30とNINJA SHELTERで挑戦することになった。荷物を詰めてみると、メーカー非推奨なくらいにパンパンに。これで走るの?と不安になった。ヒィー。

参加チーム紹介

斎藤&幾代チーム
以前、家が隣同士だった縁でアウトドア仲間になった2人。斎藤はOMM皆勤賞。

西川&相田チーム
入社4日目&1週間の2人は初めてのOMMにお揃いのキャップで参加。

梅田&クノールチーム
PRチームの2人はパンパンのRUSH 20で参加。梅田は地図読み経験ゼロ。

前夜祭〜地図をツマミにビールを飲む!?〜

受付や前夜祭の会場となるイベントセンター

大会前日、スキー場のレストランに設けられたイベントセンターで前夜祭が開催。会場内はDJブースから大音量で音楽が流れ、受付を済ませた参加者たちは仲間同士で賑わっていた。これまでマラソンやトレランの大会に何度も参加したが、前日から地図をツマミにビールを飲みながら盛り上がっている光景は初めて。「ビールは完走後のお楽しみじゃないの!?」と思った。参加者とメーカー出店者たちも友達のように交流していて、まるでお祭りのようだった。

パーゴブースの様子

そんなお祭りに出展したパーゴのブースでは、今年4月にリニューアルしたRUSHシリーズのほか、BUDDYやSWITCH、OMMでも使いやすいTRAILPOTなど多くの商品を展示・販売した。オープンして間もなくお客様が来られると、その後も客足が途切れずブースは大盛況!「RUSH 5Rと10と30を持っていて〜」「今回RUSH 30で走ります!」とたくさんのファンと話すことができた。 初回からOMMに出展しているおかげでパーゴの知名度は高く、ユーザー層も広がっているようだ。ブースには私のRUSH  20と、西川のRUSH 30の装備例を展示。実際にRUSHを背負ったお客様からは「わ、すごい!」とフィット感に感動する声も。そういうリアクションが見られると私たちも嬉しかった。

展示した私のRUSHの装備例は、複数の人から

「缶詰は中に入れたほうがいい」と言われた(反省)。

前夜祭を終え、予約していたキャンプ場に到着。宿泊するバンガローの周囲をライトで照らすと、たくさんの仮設トイレが見えた。「キャンプ場ってこんなにトイレがあったかな?」と思ったら、OMMのバナーも発見。まったく知らずに予約したが、どうやら初日のキャンプ地に泊まっているようだった。夕食後に荷物をパッキングし直すと、大会直前にスリーピングマットやウエアを変更したせいで思うように入らない。困ったな・・・。

Day1 開始5分で藪の中へ

今回出場した種目は、フィールド内にあるコントロールを自由に回って点数を集める「スコア」のうち、制限時間の長いスコアロング。私はパーゴの”スーパーバイト”こと21歳大学生のクノールとバディを組んだ。ナビゲーションを得意とする彼は、昨年のOMMでもスコアロングに参加している。一方の私はトレイルランはやっているものの、地図読み経験はゼロ。登山やキャンプの経験もほぼない。そんな凸凹ペアで走ることになった。

スタート先頭列に立つと地図がもらえ、ルートを考える

スタートエリアに入ってから、クノールとは「最初はウォーミングアップの感じでいこう」と話をした。1分おきに数チームがスタートしていって、いよいよ先頭列。OMMはスタートの1分前までどこを走るか分からない。この瞬間が一番ドキドキだった。地図をもらってから、OMMのために覚えた整置(※1)をする。これはできたが、最初の目的地とその行き方が見当つかない。あっという間にスタートの電子音が鳴り、記録用のチップを差し込んだ途端、クノールが前をいく参加者たちを追い抜いていく。ウォーミングアップって言ったのに!!

さらに、「ここ突っ切りましょう」と突然クノールが軽車道(※2)を外れて藪に突っ込んでいった。「そこは道じゃないよ!?」トレイルランではマーキングを目印に走るが、OMMはそもそも目印もコースもない。いきなり今までの当たり前が崩れた。しかし、バディとは一緒に行動しなくてはいけないため、追いかける。藪をかき分けて進むが、体中に枝が擦れて痛いし、藪に隠れた段差や倒木でバランスを崩した。なんなのこの藪は!!走りにくい!

左:メイン会場とスタート会場が離れている。新鮮。/

右:人生で初めてコントロールにパンチした

最初のコントロールを見つけられた時は嬉しかった(着いていっただけだが)。それも束の間、すぐに次のコントロールを目指して走り出す。気がついたら数mの間隔を空けてずっと着いていくような状態が続いた。時々、クノールが「道間違えました、すいません」と言って自分自身に苛立っていたようだったが、私は地図が読めていなかったので、「大丈夫ー」と返していた。

6時間以上フィールドを走り回り、大きく道に迷うこともなく、見覚えのあるキャンプ地に到着。初日の点数は450点だった。初めてにしてはなかなか点数が取れたと思う。夜ご飯は、パーゴから参加した3チームがひとつのNINJA SHELTERに集まって、トレイルポットでキムチ鍋とおでんを食べた。温かさが身に沁みる・・・。食べながら地図を広げ、「どんなルートで行ったの?」「なるべく藪を避けるルートを探して…」と盛り上がった。夜になるとキャンプ地はかなり冷え込んだが、シェルターの中は風が吹き込まず、6人が膝を突き合わせて座っていたせいか寒くなかった。

みんなで集まって食べたキムチ鍋は心と体を温めた

Day2 朝起きたらテントが凍っていた!

朝起きるとNINJA TENTのフライシートが凍っていた

朝5時過ぎ、周りのチームが準備をし始める音で目が覚めた。寒い。テントの外に出ると、フライシートの端が凍っていた。朝ご飯を食べて身支度を整え、2日目の地図をもらってスタート。歩き始めると初日の疲労が残っていて体が少し重たかった。
最初のコントロールに向かっている途中、クノールからボトムポケットが濡れていると言われた。中身を見てみると、ボトルの蓋がきちんと閉まっておらず、水が漏れていた。中に入れていたダウンや寝袋など全て濡れてしまったが、これが1日目でなくてよかったとホッとした。

見渡す限り藪。本当に藪い(やぶい)

2日目は狙ったコントロールがなかなか見つからず、2時間かけて1つのコントロールしか行けなかった。それで心身ともにグッタリしてしまい、何箇所か行くのを諦めた。それでもまっすぐ帰るわけには行かないので、いくつかコントロールを取って、スキー場のゲレンデ下に設けられたフィニッシュゲートをくぐった。あー、終わった。長いと思っていた2日間は、あっという間に過ぎてしまった。嫌というほど漕いだ藪すら恋しい。今夜は家でぐっすり寝られる安堵感と、こんな宝探しみたいな楽しいイベントが終わってしまって寂しい気持ちの両方が込み上げてきた。2日目の結果は、190点とあまり伸びなかった。クノールは帰りの車内で「なんであんな頭悪かったんだ俺...」と2日目の地図を握りしめて悔しがっていた(そのままにしておいた)。

RUSH 20で無事に走り切れました!

RUSHユーザーも大活躍!スコアロングで4連覇!

スコアロングで4連覇を達成した、大畑・福島チーム。ナビゲーション、走力はさることながら、徹底した軽量化が速さの秘訣。200mlの水を沸かせるギリギリまでガスを抜いたOB缶を準備したり、エバニューのチタンカップの持ち手を片方取り外して軽量化するなど、数g単位まで切り詰めている。TJARで培った軽量化がOMMでも役立っているとのこと。2日目は渡渉中に足を滑らせ滝壺に半身まで浸かったものの地図だけは守ったエピソードを嬉々として語ってくれた。

今年はストレートEで初めて女子チームが完走。2位の佐野・森谷チームは、RUSH 30で出走。総合でも完走した50チーム中19位で、他の男子チームをも圧倒する強さだった。

スコアロングで12位だった朝長・小川チームは、立川のトレランショップTrippersの店長と新人スタッフのコンビ。RUSH 30にカスタムして、Trippersオリジナルのトラッシュバッグを装着して使っている。店長は毎年OMMに命をかけているので、新人育成にも余念が無い。

まとめ〜OMMは冒険だった〜

最初に参加が決まった時は、面白さが分からなかったOMM。地図が読めるようになってきて、現在地がわかると「俺ってすげー」とゾクゾクした。藪をかき分けながら道なき道を進んで、さらに夜は宴会。大会ではあるけれど、点数や時間を競うだけでなく、ランナーやハイカーがそれぞれのスタイルで一緒に楽しめる。大人になってから、こんなに冒険心をくすぐられるなんてサイコーだ。みんながOMMにハマる魅力にも納得した。ちなみに今回背負ったRUSH 20はパンパンだったけれど、ストレスなく走れて快適さを改めて感じた。

一方、ブース出展については、私がOMM未経験だったので接客できるか戸惑いもあったが、前夜祭からレース後までたくさんのRUSHユーザーと話せた。RUSHの良いところをユーザーの皆さんから教えてもらえて嬉しかったし、とても勉強になった。来年はOMMのことをユーザーの皆さんともっと話したいし、レース中も自ら藪に突っ込んでいきたいと楽しみになっている。それまでに地図読みも勉強しないといけないな。

※1 整置・・・地図上の磁北とコンパスが示す北が一致するように地図を回転させること。
※2 軽車道・・・道路幅1.5m以上3m未満の道路のこと。地図では黒い実線で書かれる