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UTMF2022 参戦レポート (下家悟)
日々のトレーニングを思い出す。
仲間とガムシャラに走った日々。
失敗もした、ケガもした、それでも夢の舞台に向かって、ただ練習した3年間。
2022年4月22日、すべてはこの日のために。
さぁやりきろう。
そしていい旅を。
UTMFで7位に入賞した下家悟選手が、レースレポートを寄せてくれました。下家選手は普段からRUSHシリーズを愛用している事をきっかけに、RUSH UT3のテスターとしても協力、今回のレースでもプロトタイプを使用してくれました。臨場感あふれるレース運びを中心に、ロング走のメンタル維持、UTの使用感などをまとめてくれました。
下家悟 選手 (げや・さとる)
学生時代はサッカー部に所属。その時から競技思考が強く、上手くなりたい、ハマった事はとことん突き進むタイプだった。こう見えて負けず嫌い。常にそのことについて考えてしまって他のことが手につかず、周りが見えなかったり話を聞いていなかったりする。
23歳の時に白山に登りそこで山を走ってる人を見て、これなら俺にもできるかなーっと、なんとなく大会に出場。下りの面白さとスピード感に魅了されてどんどんハマっていった。少しずつ実力もつき、トレイルだけでは限界を感じ、今はマラソンも併用して練習を行う。nrcとteam sky kyotoというチームに所属。速くなることを大前提に、楽しく明るく元気よく走る事をモットーにしている。
戦歴
OSJ山中温泉2019 優勝
信越五岳2019 6位
奥信濃100 2021 優勝
イマジョートレイル 2021 優勝
スタート〜富士宮〜麓
スタート前から高鳴る胸。と、裏腹に満足した練習ができずに臨む不安。いや、不安の方が大きかった。それでもDNSせずに闘うことを誓いスタートラインに立った。たくさんの方から頑張ってください、優勝してくださいと声をかけられて嬉しい半面不安が増幅していっているのを感じた。
そんな事を察してかサポートのユカ(彼女)から「大丈夫」。気負わず焦らず頑張ろうと声をかけられて助けられた。
号砲が鳴らされて自然と走りは軽やかだった。どうやら今日は走れる日のようだ。そんなふうに考えてたら、いつの間にかトップ集団にいた。あーやっちまった(笑)。「いつものパターンじゃん」と頭の中にチラチラと思い始める。まぁ今日はDNFしないと決めていたので、どーとでもなれと思いこのペースで行くことにした。それでも1人1人消えていく中でなぜか自分は残れた。
「あれ? 今日は本当に調子のいい日なのか?」と思わせるような快走で奥信濃の時を思い出していた。「この感覚はもしかすると、もしかするのか?」と思うようになっていた。
麓エイドに8位で到着。調子は良いとはいえ、さすがのトップペースに足にかなりの疲労感。エイドでも他の人がどんどん次のエイドに向けて出ていく中で気持ちはもの凄く焦っていた。
「いかないと!!」
でもユカは私を落ち着かせ「マイペース」と声をかける。当初の目標である完走を思い出すことができた。なにより焦っても仕方ない、あと120kmある。我にかえりしっかり休憩して次のエイドに。
背負うのはザックだけ
完全に夜になり1人旅が続く。スタートから麓までのダメージはそんな簡単には抜けてはくれない。1つずつ順位を落とす中で焦るなと自分に言い聞かす。
「背負うのは自分のバックパックだけ」
「完走だけしてこい」
私がいつもお世話になっている方がUTMF前にくれた言葉。この言葉を思い出していた。弱くなりそうな自分。プレッシャーに負けそうな自分。それに負けないように私に授けてくれてたんだと思う。
精進湖エイド前からやっとダメージが抜け始めていた。ここからが1番自分がノリに乗ることができた。今までの疲れが嘘のようにまた快調に走ることができ、12位まで落ちた順位も6位まで上昇。
精進湖〜富士急エイド
富士急エイドに到着。完全に覚醒し、4'30"/kmまでペースアップ。カップヌードルを食べエネルギー補給もできた。ただ胃腸の調子が徐々に悪くなってくるのがわかった。胃腸薬を胃に放り込み、サポートエリア外にいたパーゴワークスの斎藤さんにご挨拶。ユカとも軽く談笑。エネルギーをもらい次のエイドに。
夜明け
山中湖きららエイドに到着。疲労はしていたものの足は動いていた。team sky kyotoのチームメイトの中谷さんから「120kmからやっと半分」と聞かされていたし、自分でもそう思っていた。実際1ヶ月前のteam sky Kyotoの100mile練習でも、そのあたりから膝が痛くなりどうしようもなくなっていたので、覚悟して臨む。
周りが明るくなり始める。それにともない気温も低くなりウィンドシェルを羽織る。
朝焼けが美しい富士山を見ながら私はもがいていた。案の定120km付近から足が止まり始め、走ることが困難になっていた。頭の中は負の要素でいっぱいだった。「やばい抜かれる。表彰台から落ちる」。二十曲エイドに着く頃には後ろと20分差あったものが0になった。
それでも覚悟を決め、どんな結果になろうとも、やり切るサポートしてくれてるユカ、応援してくれてるたくさんの方のためになんとか進んだ。
富士吉田〜ゴール
なんとか富士吉田エイドにつき完全に胃腸が壊れた。固形物を入れたら絶対リバースすると確信。なんとかジェルを無理やり押し込み進んでいた。足はすでに筋肉痛に襲われて走ることが痛みに変わっている。
それでもなんとか心を立て直し進む。この時に5位の小林選手に励まされた。自分のmileの経験などいろんな話をしていただきなんとか気持ちが紛れていた。
最後の霜山にきて、走る余裕などすでにない。
後ろを気にしつつもなんとか前に進む。登りの途中で後続の吉村選手にも追いつかれてしまい心が折れそうになる。ただ吉村選手もトラブルを抱えており目の焦点が合わないと。そこで登りはなんとか食らいつき、下りで引き離すことができた。足は痛いが必死に走りそしてゴール。
私の人生で1番長く苦しい闘いが終わった。
と同時に笑顔になり、涙が出そうになりながらも必死にこらえた。ゴールではユカ、ランナーの友人、パーゴワークスの皆さんがたくさん出迎えてきてくれた。
ゴール後はいつも思う。
たくさんの方に支えられて走らさせていただいている。
走ってる途中もみんな私の背中を押してくださって本当に感謝しかなかった。100mileは完走したら優勝なんてよく聞くが、実際走ってみて本当にそう思った。
7位 22時間12分00秒
今の私の現状を考えたら大健闘。だがやはり前に6人先にゴールしている事実を考えるともっといけたんじゃないかと思ってしまう。来年に向けて自分がどこまで成長できるか、何をするべきなのか、いろいろ考えさせられる。
RUSH UT3
やはりRUSH UT3のフィット感は抜群だ。昔からいろんなバックパックを背負ってきたがどれも体に擦れや傷などが残ることが多かった。これは揺れが原因だと思っている。が、UT3はそれが全くない。
揺れが少ないとなると体に対しての負担も少なくなる。バックパックを担いで肩が凝る人などがいるのであればぜひこのバックパックを試していただきたい。あと前、サイド、のポケット容量も非常に多く、携帯を初め補給食などもたくさん入るためにロングレースで活躍することは間違いない。あと個人的にはすごくデザインとカラーが気に入っている(笑)。
UTMFに挑戦する人へ
今回実践して良かったことをまとめた。ぜひ参考にしてほしい。
1、最後まで行くと決めてしまうこと
そうすれば覚悟も決まるし、やめようと気持ちが途中で出てもなんとか持ち堪えられる。
2、サポートをつける
エイドで仲間と談笑したりすると気がまぎれるし、気持ちの切り替えがしやすくなる。
3、2週間前からスピード練に切り替え
長い距離走ると疲労が溜まってしまうので、スピードで走った方がダイナミックフォームが身につき疲労が少ない。
4、1週間前から脂質、繊維質のものは極力食べない
消化吸収に時間がかかるのを防ぐ。