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中国焚火大会イベントレポート
中国へ来ちゃいな
「浙江省でとっても良いキャンプイベントがあるんだ。遊びに来ないか?」
「おう、楽しそう!ちょうどその週に杭州へ出張だから遊びに行くよ。せっかくだからブース出店もしたいんだけど。」
「オッケー。主催者に確認してみるよ。」
香港の友人、Taraからの誘いに乗って我々は成田空港を旅立った。中国のキャンプシーンはいかに?ワクワクするぜ!
焚火大会 "NO BAD DAYS"
中国の地元で人気のナイスガイ、Jeffreyが主催するこのイベントは今年で4回目。日本と同じく中国でもコロナ禍を機にキャンプブームが絶頂になり、多くの人がアウトドアを楽しむようになった。彼がブランドマネジャーを務める"樹線TREELINE"が開催する「焚火大会」はその中でも尖ったキャンパーが集まるキャンプイベントなのだ。そして日本と同じくブームは下火になりつつあるのだが、それを吹き飛ばしたいという彼らの想いが「NO BAD DAYS」というタイトルに込められている。今回は代表の斎藤がこのイベントをレポートする。
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ここは道志か?朝霧か?
会場である小杭坑エコキャンプ場は、なだらかに蛇行した川沿いにあり、広い芝生には日差しが降り注ぎ、目に映るのは緑の里山と青い空だけ、という絶好のロケーション。
到着早々にびっくりしたのはキャンパー達の風景だ。
ここは日本か?と思うほど日式露営スタイルが流行っている。しかもバリエーションも豊富だ。スノーピークで固めた標準的スタイルに始まり、流行りのブラックスタイルや、オールドスクールなHDスタイル。パップテントの BCスタイルも居れば、テントサウナつきのラグジュアリー系までが混在する。みんな日本と中国のガレージメーカーを愛用していて、洋服もしかりだ。そんなキャンパーが400人も集まっている。なんなんだココは!
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中国にもパーゴファンがいた!
Jeffreyが用意してくれたエリアにブースを設営すると次々とキャンパーが遊びに来てくれた。嬉しかったのはみんなパーゴワークスを知っていてくれたこと。中にはなんと自分のNINJA TENTにサインを求めてきた女子がいて、恥ずかしそうにパーゴ愛を語ってくれた。いつのまにか中国にファンが出来ていたなんて、老板は嬉しすぎる。(老板は中国語で「ボス」の意味。)
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ブースでは友達が友達を呼び、たくさんの人とWeChat(中国版LINE)を交換した。せっかくなので何人かを紹介しよう。
NINJA TENTの大ファン、CCCCCCR
パーゴワークスがイベントへ出店しているときいて、500kmも運転して来てくれた彼女。日本好きで、キャンプしながら日本中を旅行した様子を写真で見せてくれた。
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敦煌にキャンプ場をつくった、Hannah
コロナ禍を機に仕事をやめて広州でキャンプ場を作り運営しているハンナちゃん。今年はなんと敦煌の砂漠地帯にもキャンプ場を作ったという。スケールのデカさに脱帽。
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香港ガレージブランドの雄、Patrick
プロダクトデザインを学び、アウトドアが好きでSYZYGYというブランドを始めたという彼。バックパックやアウトドアギアの収集癖がひどくて、いつもスタッフを泣かせているという、僕とそっくりなダメ男だ。(笑)
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上海のU.L.第一人者、Psnake
北京からゴビ砂漠、万里の長城を辿る古道など国内のあらゆるトレイルを歩いた経験をもとに2015年からガレージメーカーをやっているDCF職人。今回の旅ではTaraとともに本当にお世話になった。
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夜の宴は中華風
キャンプサイトだけを見ていると日本となんら変わらない風景も、夜になると中国らしさが現れる。それはやっぱり「料理」だ。大勢で焚き火を囲み、地元の野菜や肉を美味しく料理して楽しむ。地元だけでなく広州や北京、潮州など全国から集まっているので、食事のバリエーションもさぞかし豊富だろう。聞いた話では参加者はみんな、この村の新鮮なニワトリ、つまり”LIVE CHIKEN”を目当てにしていたそうだが、このイベントのおかげで入手困難だったらしい。村のニワトリはキャンパーに食べ尽くされたのかもしれない。ちなみに最終日には村民から6頭の豚がキャンパーに振る舞われた。日本じゃなかなか聞かない話だ。まさに「食は中国にあり」なのだ。
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ぼくドラえもん
酒の席で名物キャンプ系インフルエンサーのKCから質問を受けた
KC「日本は1996年にキャンプブームが終わったよね?その後どうなったのか教えてほしい。」
なんという素晴らしい質問!そんなこと良く知っているぜ。酒の勢いもあってこの質問には1時間かけて答えた。2000年代のフェスブームからSNSコミュニティの話と現在に至るまで...。
私「けっきょく日本では経済危機のあとにアウトドアブームが来てるんだ。バブル崩壊後のキャンプブーム、コロナ禍でもブームが起きただろう?」
KC「そうなのか!?おれは経済が良いと余暇と所得が増えてアウトドアが流行ると思ってるけど」
私 「君たち中国人はお金のかかるキャンプスタイルからスタートしたからね。本来は体ひとつで寝るのがキャンプの楽しみだろ?」
KC「そうかなあ・・・」
私 「今は豪華なキャンプが流行っていて、それが廃りつつあるだけ。こんなに素晴らしい土地に恵まれているんだから、心配しなくていいよ。タープで寝たっていいじゃない」
KC 「うん。きみは未来から来たドラえもんみたいだね。かんぱーい!」
彼は納得したのか、しなかったのか?まあいいや。
そして二日目の夜にはファイヤーダンスと焚き火の儀式が行われ、参加者全員が「NO BAD DAYS」を祈るのであった。
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忍者村見参!
翌朝、テントの外から声がした「タープだけで寒くなかった?」「こんな小さなテントで寝たの?」と通りすがりのキャンパー達の喋る声。ふと気がついた「もしかして俺達は浮いてる?」 この賑やかなキャンプサイトで我々だけがU.L.スタイルだったのだ。しかもNINJAだらけの忍者村。シュラフの中で昨晩のKCとの話を思い出した。たとえブームが去ってもこの村の住人だけは生き残るだろうと。
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島国の遣唐使が感じたこと
今回のイベントに来ていたキャンパーは中国国内でもプレミアムな人たちのようだ。主催者のJeffreyが選んだ上質なマニアたちだ。みんな礼儀正しく、キャンプマナーや環境意識も抜群だ。(恥ずかしいことに食事の時に割り箸を使っていたのは僕ぐらいだった、昔の遣唐使の気分だ。)
それぞれにスタイルを持ち、趣味を追求し、楽しみを分かち合う。すばらしいキャンパー達だった。キャンプブームは下火らしいが、こんな人たちがきっと沢山いるんだろう。心配しなくていい。
そして中国人は外への好奇心が強く、学ぼうとする意欲が旺盛だ。これは仕事を通じて昔から感じていることだけれど、この国の経済発展の基礎になっているのは間違いない。日本が追い越されてしまったのも納得できる。彼らに学ぶべきことはたくさんある。
そしてもう一つ。やはり中国のアウトドアフィールドは魅力的だ。この国には砂漠だって氷河だってある。日本にはないダイナミックな風景が広がっている。この大地をもっともっと知りたい。
ぼくは空港に向かうタクシー内でPsnakeと約束した。 「いつか一緒に万里の長城をハイクしよう、そして敦煌でキャンプしよう」
Pack and Go!